建築家ル・コルビュジエとは

近代建築の三大巨匠のうちの一人である「ル・コルビュジエ」。ここでは、ル・コルビュジエの魅力や代表作を紹介します。

ル・コルビュジエとは

1887年、スイスで誕生したル・コルビュジエ。時計職人である父とピアノ教師の母の間に生まれ、時計職人の家業を継ぐべく装飾美術学校へ進学しました。しかしル・コルビュジエは視力が弱く、精密な加工を必要とする時計職人への道は断念。将来有名な建築家となるル・コルビュジエですが、美術学校の校長から才能を見出されたことがきっかけでした。

建築について学び始めたル・コルビュジエは、1907年に建築家ルネ・シャパラとともに「ファレ邸」を設計。その1年後にはパリを訪れ、オーギュスト・ペレやペーター・ベーレンスのもとで建築を学びます。

ドミノシステムや近代建築の5原則を発表

本格的に建築家を目指し始めたル・コルビュジエは、1914年に「ドミノシステム」を発表しました。ドミノシステムは新しい架構形式であり、鉄筋コンクリート構造を使用しているのが特徴。また、1917年にはパリにて従兄弟である建築家ピエール・ジャンヌレと共同建設事務所を設立。建築家としての活動を開始します。

そして、1926年に「近代建築の5原則」を発表。5原則の理念に基づいてサヴォア邸の設計を行うほか、1930年には「現代建築国際会議(CIAM)」を開催し、都市計画案を発表しました。さらに、第二次世界大戦後には「モデュロール」を発表し、建築の基準寸法システムを示しています。なお、モデュロールは、マルセイユのユニテ・ダビタシオンといった大型公共建築に活かされています。

日本においては、1955年に日本人の弟子たちとともに建設を行った「国立西洋美術館」に、ル・コルビュジエの思想が体現されています。


ル・コルビュジエ建築の魅力とは

ル・コルビュジエが手がける建築の魅力は、固定観念に縛られない発想から生み出された、自由な設計。石やレンガでつくられた壁・三角の切妻屋根といった建築の常識を壊し、より自由で快適な室内空間を実現しています。

ドミノシステム

ル・コルビュジエがドミノシステムを発表した当初は、石やレンガを積み重ねた壁が一般的でした。しかしル・コルビュジエは鉄筋コンクリート構造を採用。鉄筋コンクリート製の柱と床板で建物の荷重を支える架構形式です。ドミノシステムでは柱で床を支えるため、上下階の壁や間仕切りを自由に設置できるようになりました。

近代建築の5原則

近代建築の5原則は、「ピロティ」「屋上庭園」「自由な平面」「自由な立面」「水平連続窓」から成り立っています。

ル・コルビュジエが発表した近代建築の5原則は、伝統的な建築の概念を破壊するもの。屋外にいるのに建物の下にいるピロティ、植物を育てることのできる屋上、ドミノシステムによって実現する自由な平面と立面、採光性に優れた水辺連続窓など、当時の建築における常識をことごとく壊すものでした。そして、近代建築の5原則は、建築素材や建築方法に技術的な革命をもたらしました。

建築家ル・コルビュジエの
代表作

新しい発想で数々の建築物の設計を手がけてきたル・コルビュジエ。ここでは、ル・コルビュジエの代表的な作品の一部を紹介します。

サヴォア邸

フランスのパリにあるサヴォア邸は、ル・コルビュジエの近代建築の5原則に基づいて設計されています。「20世紀の住宅における最高作品」と称されており、ピロティが特徴的。居住部分が空中に浮かんでいるかのような印象を与えています。また、屋上庭園や水平連続窓、自由な平面なども実現しており、直線的な構造に曲線も採用することで、ゆったりとくつろげる居住空間を実現しています。

国立西洋美術館

1959年につくられた国立西洋美術館。ル・コルビュジエが設計を行い、弟子である前川國男、板倉準三、吉阪隆正の3人が建設の監理を行いました。

国立西洋美術館には「水平横長の窓」や「視線を変えながら美術鑑賞を行えるスロープ」といったル・コルビュジエのこだわりが活かされていますが、「無限成長美術館」という計画を試みているのも特徴です。館内をらせん状の通路で繋ぐことでらせんの渦を大きくしていき、展示品が増加しても増床できるようにしたのです。

ル・コルビュジエの魅力や思想を体感したい方は、ぜひ国立西洋美術館へ足を運んでみてはいかがでしょうか。

ロンシャンの礼拝堂

国立西洋美術館の設計を行っている頃、ル・コルビュジエはロンシャンの礼拝堂も建築しています。この礼拝堂はル・コルビュジエの晩年の代表作ともいわれており、カニの甲羅をモチーフとした独特な形態が特徴。当時の一般的な礼拝堂と比較して、竣工時に人々を驚かせたことは容易に想像できます。

なお、ロンシャンの礼拝堂は、ル・コルビュジエが提唱してきた近代建築の5原則とは異なっているのも注目すべき点。機能性や合理性を超えるさらに自由な造形を実現しています。

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