建築家 ノーマン・フォスターとは

ここでは、イギリスのマンチェスター生まれの一代貴族、ノーマン・フォスターの建築物をご紹介します。ハイテク建築のパイオニアで、日本にも作品があります。

ノーマン・フォスターとは

ノーマン・フォスターはイギリスのマンチェスターの裕福ではない労働階級出身で、プリツカー賞やメリット勲章を受賞し、一代貴族にもなった建築界の巨匠です。1970年のハイテク建築のパイオニアの1人で、現代建築界に大きな影響を与え続けています。


世界的に知られた代表作は「香港上海銀行・香港本店ビル」「アップルパーク」「ガーキン」など多数です。1953年に入隊した空軍の兵役を終えたあと、スイス生まれの建築家ル・コルビュジエの著作を読み、建築デザインのとりこになり、マンチェスター大学建築学科に入学しました。


大学では大胆な風車デザインで賞を受賞し、1961年に奨学金によりイェール大学に留学します。卒業後、1963年に建築事務所を設立して最初の設計デザインで王立英国建築家協会RIBA賞を受賞しました。1967年にはコンピューター技術を駆使してモーフィングの手法を研鑽し、以降、現在までガーキンや香港上海銀行・香港本店ビルなど世間を騒がせる作品を発表し続けています。

ノーマン・フォスター
建築の魅力とは

ノーマン・フォスターの建築には、どのような特徴があるのでしょうか。

ハイテク建築のパイオニア

ノーマン・フォスターはハイテク建築のパイオニアです。ハイテク建築は建築の既成概念を大きく壊すものでした。隠すことが常識だった設備や構造を表に出す考え方は革新的です。


ノーマン・フォスターは少年時代から、レーシングカー、特にポルシェのデザイン性に「未来の彫刻を想起させる芸術作品」と魅了されていました。イギリス空軍ではパイロットとして軍務についています。作品の中には飛行機の要素を取り入れたものもあります。また、伝統的な素材に工業用資材を取り入れた作品も見受けられます。ハイテク建築は、少年時代からの志向が土台にあるのかもしれません。

鉄とガラスとコンクリート

鉄とガラスもノーマン・フォスターの特徴です。世に知られるようになった当初は、確かにハイテク志向がより前面に出ていました。ただ、徐々に変化が生まれており、モダニズム建築が目立ちはじめます。

代表作品であり、より名声を得るきっかけとなった「香港上海銀行・香港本店ビル」などが、ノーマン・フォスターが手掛けたモダニズム建築の一例としてあげられるでしょう。鉄とガラスといった素材や材料の特徴を活かした作品です。

モダニズム建築は機能主義、合理主義を重視しています。合理的な造形理念を反映させた建築であり、歴史的な建造物の手法を否定したものです。モダニズム建築が近代建築とも呼ばれる理由ともいえるでしょう。

ノーマン・フォスターの
代表作

ノーマン・フォスターは、センチュリータワーをはじめ日本にもいくつか建築物を建てています。

センチュリータワー

センチュリータワーは文京区に建てられたオフィスビルです。ノーマン・フォスターの日本での作品で、1991年、大林組の施工で建てられました。文京区初の超高層ビルであり、計画したのは旺文社の赤尾一夫氏でした。現在、学校法人順天堂が所有者であり、柱には順天堂大学11号館という名前が見られます。

低層部は10層、高層部8層の構成です。南北にあるオフィススペースの間に、オープンタイプのアトリウムが設置されています。また、2つのアトリウムの上下は、ガラスの仕切りにより連結している点が大きな特徴です。西側の面にはガラスエレベーターシャフトが位置しています。

鎌倉の住宅(現 鎌倉歴史文化交流館 )

鎌倉扇ヶ谷にもノーマン・フォスターの作品「鎌倉の住宅」が建てられています。センチュリー文化財団所有の個人宅として建築されました。ただ、2013年、鎌倉市に土地とともに寄贈されています。以降、鎌倉市歴史文化交流館として運営中です。

個人宅の規模とは思えないほど大きな建築物であり、石壁の廊下にはところどころ表面をくり抜いた箇所に照明が設置されています。構成する資材としてノーマン・フォスターの特徴でありモダニズム建築でよく見られる建築資材としての石が多いです。他にも特殊な建築資材が多く見受けられます。

ガーキン(30セント・メリー・アクス)

ガーキンはノーマン・フォスターの代表作品の1つで、イギリスロンドンの金融中心地、シティ・オブ・ロンドンにある超高層ビルです。ガーキンとはピクルスに使うような小さいサイズのキュウリを意味します。まさにガーキンに見えることが理由です。

高さ180メートルは、ロンドンを見ても非常に高い部類です。円錐形の形状は非常に独特でオリジナリティがあります。また、円錐形状の形態はビル周辺に発生する乱気流を減らす意図が反映されたものです。デザインについて高い評価を受けており、2004年英国王立建築家協会(RIBA)審査員満場一致のスターリング賞、2003年エンポリス・スカイスクレイパー賞を受賞しています。

注目点は、外観だけではありません。ガーキンは環境にも配慮した設計意図が含まれています。たとえば、各階に6つのシャフトを設けており、ビル全体へ空気を送る自然換気システムとして機能しているのです。また、巨大な複層ガラス効果もシャフトによって生まれています。夏場はビル内の暖かい空気を出して冬はパッシブソーラー暖房を使い、暖かさを保つ仕組みです。また、日光の通りをよくするという点でもシャフトは機能しています。

日本の高級住宅地を見てみる