内装の色の決め方で悩んでいます。
現在、新築しています。2ヵ月が経ち、いよいよ内装の色を決める段階になりましたが、なかなかイメージがまとまりません。
建築会社から提案される色もピンと来ず、おしつけがましい部分ばかりが気になります。カラーコーディネートとかカラーバランスとか言われますが、どういう風にインテリアの色を決めたらいいか、基本的な所を教えてください。
(札幌市・Yさん)
日本人は本来、優れた色彩感覚を持っています
日本人は遠い昔から、自然の美しさに魅せられ憧れてきました。そして日本には、建物に寄り添うような自然の織り成す四季折々の美しさがあり、その中には「色」が満ちあふれていました。その表情を歌に詠み、絵に描き、着物に染めることで、美しい自然を身近に置こうとしてきたのです。
日本の伝統技術や神社・仏閣などの古い建物を見ると、本来日本人は優れた色彩感覚を持っていたことに気付かされます。時間とともに様変わりする自然光を巧みに利用し、素材や柄を上手に組み合わせることで空間を彩る術を、昔の日本人は知っていました。
色を光の要素としてカラープランニングを行うべき
学問における「色」は、イメージを仕上げるために非常に大切な要素です。しかし、その表現方法いかんで、空間のイメージがまったく異なってしまうことも事実。プロの建築家は、空間における「色」を光として捉えます。
「色」は光が物体に反射・透過した結果、その光が目に入ることによって初めて認識されます。光がなければ「色」は認識されることはありません。実際には物体の色とは、その物体を取り巻く照明条件によっても影響されてしまうものです。
光と色、さらに空間を取り巻く照明環境はとても深い関係にあり、だからこそ色を光の要素として理解し、カラープランニングを行うことが大切です。使い勝手の良い心地よい空間ができ上がったら、その空間にどのような光をどのように落としたいかを考え、調和することでインテリアができ上がります。
素材感を意識して空間を作ろう
そしてもう一つ大切なのは、空間をより豊かに表現する要素、テクスチュア(素材感)の存在を意識することです。
素材感は二つの要素からなります。一つは照明効果と非常に深い関係にある視覚的要素。光が壁などに反射することで艶感、マット感、滑らか感、ラフ感など様々な壁の表情が現れ、それはテクスチュアとして認識されます。
物理的要素とは触覚のこと。美しいものを見た時に、その物質に触れてみることでテクスチュアを理解することができます。それが空間に、表情や質感という新しい要素を加えるのです。
空間の色を決める際の3つのポイント
空間の色を決める時のポイントの基本は、1.心地よい流れを感じる「リズム感」。2.全体の雰囲気を決める「バランス」。3.何色を強調するのかの「テーマ(意図)」があることです。
自分のつくりたいイメージに合った色を選び、素材の持つテクスチュア効果を考慮しつつその組み合わせを考えます。天井の高さ、日当たりの良さ、部屋の広さ、建築的な形状、家具の形状など、空間的な要素の中でどの部分を強調したいのか、またどこの印象を弱めたいのかなどを考えます。そして改めて、選んだ色味やそのコンビネーション、そしてテクスチュアがそこに適しているかを検討するのです。
色彩で空間を表現することは、自分自身の思考や生き方、趣味趣向そのものを空間に反映させること。本来「自然」に学び、共に生きることを大切にしてきた日本人だからこそ、自然が生み出す空気感や色味などを意識してイメージを明確にすることで、完成度の増した「自分らしい空間」をつくることができるのです。
家づくりは「人生最大の楽しみ」といいます。どうぞ楽しみながら空間のイメージをつくられるよう、祈っております。
編集チームのまとめ
内装の色決めは「光」がポイント
色は光が反射したり、何かを透過することではじめて認識されるもの。「色」だけにとらわれるのではなく、「色」を「光」の要素として認識することがカラープランニングのポイントであることが分かりました。なんとなくむずかしそうな作業に思えますが、「人生最大の楽しみ」という言葉どおり、楽しみながら空間づくりをしていきたいものです。
建築家
HOPグループ代表 CEO石出和博
~Kazuhiro Ishide~
北海道芦別市生まれ、北海道産業短期大学建築学部卒、中堅青年海外派遣事業で渡米した米国の建築に刺激を受け、日本の伝統建築を学ぼうと帰国。1973年藤田工務店入社、宮大工の技術を学ぶ。1989年1級建築士事務所アトリエアム(株)を設立し、伝統住宅、茶室など多数の作品を発表。1996年林野庁の支援を受け国産木材を活用した産地直送の住宅供給システム、HOPハウジングオペレーションアーキテクツ(株)を設立、現在に至る。受賞歴、著書多数。
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アーキテクツ
現代的な先端の感性に伝統の様式美を調和させ、「100年経ってもさらに魅力を深めてゆく」美しい建築作品を生み出し続ける、気鋭の企業。
“森を建てる”をキーワードに、高品質の国産材にこだわり、乾燥技術から加工技術、建築までを協業化した、画期的な産地直送住宅供給システムを確立。建物に命を吹き込む建築を追求し続けている。