建築家ジャン・ヌーヴェルとは

このページでは、フランス人建築家として活躍し、フランスだけでなく日本を含めて様々な建築賞を受賞しているジャン・ヌーヴェルについて、特徴や魅力、代表作などを紹介していますので、豪邸や高級注文住宅の設計の参考としてご活用ください。

建築家ジャン・ヌーヴェル

ジャン・ヌーヴェルは、第二次世界大戦の終戦直前である1945年8月12日にフランスのロット=エ=ガロンヌ県フュメルで誕生しました。ジャン・ヌーヴェルはパリにある美術学校「エコール・デ・ボザール」で建築やアートについて学び、1987年には「アラブ世界研究所(パリ5区)」の設計によって国際的な注目を浴びました。


エコール・デ・ボザールはガラスを活用した美しい建築デザインを得意としており、ガラスの反射や屈折、透過といった素材特性を活かしてあたかも建物が消失してしまうような「透明建築」はエコール・デ・ボザールのシンボルとしても知られています。多種多様なガラスを併用することで個性的かつ独創的な建築物を叶えるエコール・デ・ボザールのデザインセンスや建築技術は国内外で評価されており、1989年のアガ・カーン賞や高松宮殿下記念世界文化賞(2001年)、プリツカー賞(2008年)といった複数の賞を受賞しています。


2005年にはデンマークにあるルイジアナ近代美術館において個展が大々的に開催され、改めて近現代を代表する建築家の1人として数多くのファンを魅了しました。日本国内にもエコール・デ・ボザールの手がけた建築物は存在しており、例えば東京汐留において2002年に建てられた電通本社ビルもその1つです。

ジャン・ヌーヴェル
建築の魅力とは

ジャン・ヌーヴェルの個性的な建築スタイルや独創的なデザインの魅力について解説します。

様々なガラスを自在に操る独創性

ジャン・ヌーヴェルの建築物やデザインの特徴として、ガラスを活用したスタイルを無視できません。1987年に手がけられたアラブ世界研究所(パリ5区)では、巨大な建築物の一面がガラスとアルミパネルによって構成されるガラスウォールで構成されており、これはアラブ建築の窓の1種である「マシュラビーヤ」から構想を得たとされています。それぞれの窓にはカメラの絞り機能を再現したような機構が組み込まれ、開閉調整することによって採光性がコントロールされるようになっているなど、デザイン性だけでなく機能性にもこだわっていることがポイントです。


伝統的なアラブの意匠の精緻さやフランス・パリが誇る歴史的な景観の美しさ、そして建築当時の先端技術などをふんだんに取り入れて融合された、ジャン・ヌーヴェルの独創的なセンスは国際的にも高い評価を集めました。

ガラスに周囲の環境を反射させるアイデア

ジャン・ヌーヴェルにとってガラスは単に光を透過する透明な板や素材ではありません。時にはガラス表面の屈折率や反射率も見事に計算してシミュレーションし、デザインや設計へ活かすことによって、建物の表面をあたかも鏡のように構築し、周辺環境を反射させて外装デザインとして取り入れるといった工夫も再現しています。


個々のガラス窓に反射された空の青さや周囲の街並みは、さながら美しいモザイクアートやタイルアートのように建物を彩り、革新的なデザイン性や技術力を備えながら伝統的な美観を表現していることが特徴です。そのため、もし自宅としてプランニングする高級注文住宅の設計やデザインにジャン・ヌーヴェルの感性やアイデアを取り入れる場合、ガラスを活用して開放的かつ機能的な住環境をデザイニングしていくことになるでしょう。

内部の居住空間にも配慮したデザイン

ガラス張りの壁面やデザインといった外観に目を奪われがちですが、ジャン・ヌーヴェルは決してデザインを優先して室内空間の居住性や快適性を無視するといったことは行いません。ジャン・ヌーヴェルの建築物の特徴はガラスを活かしたデザインであり、さらにその素材性を活かした採光や解放感の獲得といった建物の中で暮らす人々にとっての快適性にも反映されています。


ジャン・ヌーヴェルは建物のコンセプトや目的、そこを利用する人々の特性などに合わせて数多くの建築物や施設の設計・デザインに携わっており、企業ビルから美術館まで幅広い代表作を有していることがポイントです。

ジャン・ヌーヴェルの代表作

ジャン・ヌーヴェル建築の代表作について、日本国内にあるものから世界各地にあるものの一部をご紹介します。

電通本社ビル(東京・汐留)

東京都港区の汐留シオサイトに建てられた電通本社ビルは、ジャン・ヌーヴェルが手がけた日本国内の建築物として知られており、中でもオフィス棟がジャン・ヌーヴェルによってデザインされました。広告代理店である電通の本社ビルとして活用されると同時に、レストランや劇場、博物館といった施設も入っている人気の観光スポットであり、ブーメラン状に湾曲した建物の壁面は見る時間帯や角度によって様々に変化することが特徴です。


なお、電通本社ビルは2021年に電通によって本社ビルの売却が検討され、新たな売却先として大手不動産会社などが報道されました。

アラブ世界研究所(パリ5区)

上述したように、アラブ世界研究所(パリ5区)はジャン・ヌーヴェルの実力と名声を一気に世界へ認めさせた代表作の1つであり、アラブ建築様式の伝統美と近代技術の融合によって誕生したガラスウォールの美しさや機能性は、イスラム文化の品格と芸術美を象徴する現代建築物へ贈られる「アガ・カーン賞」を獲得しています。


アラブ世界研究所は現代でも西欧圏とアラブ圏をつなぐ拠点として活用され、それぞれの文化の架け橋になっています。

カルティエ財団現代美術館

パリにあるカルティエ財団現代美術館も、ジャン・ヌーヴェルの代表作の1つです。道路に面した正面の壁(ファサード)は一面がガラス張りになっており、いかにもジャン・ヌーヴェルの特徴的な芸術センスが活かされています。


同建築物はアラブ世界研究所と比較して語られることも多く、イスラム伝統美に根ざしたアラブ世界研究所と、そこに確かに存在するはずなのに光の効果でファサードが消失したかのように感じられるカルティエ財団現代美術館は、それぞれ象徴的な代表作となっています。

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