建築家ロバート・ヴェンチューリとは

ここでは、20世紀を代表するポストモダンの建築家ロバート・ベンチューリの建築の特徴や魅力、代表作を紹介しています。
魅力的な高級注文住宅を建てるための参考にしてもらえれば嬉しいです。

ロバート・ヴェンチューリとは

ロバート・ベンチューリ(1925-2018)は、米国ペンシルベニア州フィラデルフィア出身の現代建築家です。プリンストン大学を首席で卒業(1947年)、美術学修士を取得(1950年)したのち、本格的な設計活動を開始。

アンチモダニズム、ポストモダンの提唱者として自由な気風を重んじた建築理論を探求しつつ、「母の家」「ギルドハウス」「ブラント邸」「アレン美術館(増築)」「メルパルク日光霧降(日本)」など、数多くの個性的な作品を発表。

1991年にはプリッカー賞を受賞したほか、「建築の多様性と対立性」「ラスベガス」など自身の建築思想を盛り込んだ著作も発表、ペンシルべニア大やハーバード大など複数の大学で教職も務めるなど多彩な活躍をしています。

生涯をかけて画一的なモダニズム建築を否定する一方、複合性・多様性のあるポストモダンの普及において、一切の妥協無く活動し続けた気骨のある建築家です。

ロバート・ヴェンチューリ
建築の魅力とは

ポストモダンの旗手として知られるロバート・ベンチューリの建築の特徴や魅力、思想、傾向などをご紹介します。

ポストモダニズム(アンチモダニズム)

建築物の設計思想におけるベンチューリの基本的なスタンスは、ポストモダン(アンチモダン)にあります。彼は諸々の作品・著作を通じて、合理的かつ統一的なモダニズム建築を否定し、機能的ではあっても「退屈」な近代主義を批判しました。

一見、統一的に見えながら、その実質において不都合な部分を隠しただけの偽善的な合理性ではなく、複合性や二重性が雑多に混在しつつも、欺瞞のない真実の姿を映し出した、自由と多様性のある建築を追求したのです。

こうしたスタンスは、ベンチューリの多くの作品で根本理念として不動の地位を確立しています。

多様性と対立性を認めた個性的な建築スタイル

ポストモダンの提唱者であるベンチューリ建築の最大の特徴は、多様性と対立性です。モダニズム建築が統合性や単純性を追求したのに対し、ベンチューリのモダニズム建築は、複合性や個性を重んじ、画一的な方向性にしばられない自由な気風に満ちた設計・デザインを追求しました。

そのためベンチューリの作品の多くで、性質の異なる要素が互いに並置され、対立性の発生を認めています。テーマやテイストが同一の建築内に複合的に同居する様式は、まさしく統一的なモダニズム建築とは好対照なスタイルをとっていました。

      

古典から現代まで種々雑多なテイスト

ベンチューリの建築スタイルは、単純なアンチモダニズムではありませんでした。彼の作品の中には現代的なテイストだけでなく、古典的なモチーフを活用したデザインもみられるほか、古典からポストモダンまで幅広く雑多に配したハイブリッドな建築作品も少なくないのです。

このような傾向は、ベンチューリが必ずしもモダニズム建築を絶対悪としたかったわけではなく、モダニズムに限らず統一性や合理化を追求することで、建築における芸術性や個性が失われることへの警鐘を鳴らしたいと考えていたことが伺えます。

ベンチューリは反モダニズムというより、独創性のある建築を追求していたのです。

建築家ロバート・ヴェンチューリの
代表作

日本での設計実績もあるロバート・ヴェンチューリの代表作を3つをご紹介します。

メルパルク日光霧降

メルパルク日光霧降は、1996年に栃木県日光市に竣工した郵便貯金による保養施設(現在は「大江戸温泉物語 日光霧降」として運営)です。

ヴェンチューリが日本で設計した唯一の作品であり、希少価値が高いのもさることながら、ヴェンチューリらしい複合性や対立性が見られるのが特徴です。

全体にインパクトは強くありませんが、花、提灯など日本的なモチーフを使用したパネルを造形したり、モンドリアンの絵画を模したパターン壁面をしつらえたり、ポスト、花飾りの電柱を設けたりするなど、和洋のテイストが入り混じって有機的な対立性をなす、とても楽しく賑々しい仕上がりとなっています。

母の家

母の家は1963年、ヴェンチューリがペンシルバニア州チェスナット・ヒルに設計した住宅です。

初期に手がけた代表作の一つとして有名なほか、上部が割れた切妻屋根、左右非対称な煙突や窓、窪みのある玄関など、随所にトリッキーな仕掛けが多く、一貫性に欠ける点において、まさしくポストモダニズムを体現したヴェンチューリを象徴する名作となっています。

とりわけ、三角の切妻屋根はモダニズムでは御法度とされていた様式であり、それをことさら強調して表現したあたりがヴェンチューリの真骨頂といえるものです。

セインズベリ棟

セインズベリ棟は、イギリスのロンドンにある国立美術館「ナショナルギャラリー」で1991年に増築したギャラリーです。ヴェンチューリとデニス・スコット・ブラウンが共同で設計を手がけた作品です。

建物はルネサンス絵画を展示するギャラリーにふさわしく、多様性に富んだポストモダン様式が表現されているほか、内部はギャラリーに加えて会議室やレストラン、シアター、ミュージアム、ショップを備えるなど内外共に充実しています。

装飾は控えめですが、本館に負けず劣らずの存在感あるギャラリー棟です。

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