家の新築を考えています。欠陥住宅にしないためには何に注意すればいいのでしょうか。
先日、友人に誘われて、ある欠陥住宅の勉強会に参加しました。欠陥の事例を聞いているうちに家を建てるのが恐ろしくなってきました。しかも、欠陥に対する具体策が今ひとつ具体的ではなく、主催者は「気をつけよう」とあいまいに繰り返すばかりで、私には何をどのように気をつけたらいいのか、最後まで理解できないまま勉強会を終了しました。現在、家の新築を考えているのですが、自分が建てる家を欠陥住宅にしないためには、どのようなことに注意すればよいのか、アドバイスしてください。
(札幌市・Fさん)
住宅の保証は、俗にいう「欠陥」を保証していない?!
注意点の前に、まずは「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)について触れておきましょう。2001年に施工された品確法は、消費者が安心して良質な住宅を取得できるようにすることと、住宅生産者などの共通ルールのもとで、より良質な住宅供給を実現できる市場の条件整備の、2つを目的としています。
この法律によって、従来2年とされてきた住宅の瑕疵保証が10年まで延長されました。消費者保護の観点からみれば喜ばしいのですが、保証される部分が柱や梁といった構造部に限定されていることに注意する必要があります。
つまり、私たちが俗に「欠陥」と呼んでいるトラブルまで保証しているわけではないのです。私の経験上、主要構造部分の欠陥が問題視されることは少なく、構造上の問題か、仕上げ材の問題か、判断に迷うケースがほとんどです。
欠陥で最も多いのは「外壁」のトラブル
ハウスドクターで行った診察集計の中で最も多い欠陥は、外壁のトラブルです。外壁の亀裂は品確法によって保証の対象にはなりましたが、明確な数値が示されておらず、それを理由に耐久性や趣が高いモルタルなどの湿式工法の壁を避けて、サイディングを貼る住宅が増えています。9年目にサイディングがボロボロになったケースもあり、耐久性は真剣に考えるべき問題。天然素材やムク材は亀裂や反りが多少あっても、多くは高い耐久性を持っています。住宅メーカーが自己保身のためにサイディングを多用することは残念な限りです。
次に多い欠陥は「雨漏り」「結露」
次に多かった欠陥は、屋根からの雨漏り。そして結露、シックハウス・内装、設備・違反建築と続きます。これらのうち、10年保証の対象になるのが雨漏りです。原因がはっきりと目で確認できるので、問題解決は意外に早いでしょう。
結露は、室内で発生する水蒸気量と換気のバランスが悪いと発生するのですが、断熱が悪く壁内結露が起こると、カビが発生して取り返しのつかない状態になることも。また、結露対策に効果があるといわれる吸排気型の集中換気も万能ではなく、吸気側の配管にカビが発生したり、吸気・排気のバランスが崩れるため、扱いやすい換気専用タイプがお勧めです。
「シックハウス」のトラブルを防ぐには
シックハウスのトラブルは、新築住宅では年々少なくなる傾向にあります。内装メーカーのシックハウス対応製品が住宅の標準仕様になってきたためですが、「健康住宅」をうたい文句にしている割には自然素材の使われ方が少ないのが残念です。
建築業者に内装仕上げ材や塗料などにノンホルマリン仕様のものを使うよう明確に依頼し、現物を見せてもらってください。
家づくりには心の余裕も大切
家を建てるには、良い建築主と施工者(設計者)が必要です。よく話し合って共同作業をして作り上げるからです。良い施工者はどんな建築を形にしていくのか、設計図、仕様書、見積内訳書などを明確に提示して、耐久性能まで説明して合意を得なければなりません。
住宅はその人の人生そのものの表現の場。良い建築主は予算を考慮しながら、人生観、暮らし方、外とのつながりなどを語って欲しいのです。工業製品での住まいづくりは、なにか物足りなさを感じます。できるだけ自然に近い建材をお勧めしていますが、天然素材は扱いが難しく、施工ムラが多少生じます。しかしそれを趣(おもむき)と考える心の余裕も大切。良い施工者は建築主のそういう感覚や思いを形にしなければなりません。
建築主の中には時として、手作りの許容範囲内のものであっても許せず、仕上がりを口実に工事費減額を訴えるケースもありますが、そういう建築主には均一な仕上がりを期待できるプレハブ住宅をお勧めします。住まいの価値は快適性や楽しさなど、定量化できない心の充実が必要です。性能や品確法の議論だけでは不十分なものになるでしょう。
編集チームのまとめ
保証があるから…と安心しないことが大切
住宅の欠陥でもっとも多いのは「外壁トラブル」、次に「雨漏り」「結露」「シックハウス」とのこと。家を建てる際にはこれらの対策をしておくべきですが、住宅の保証外であるケースも多いそうなので注意が必要ですね。
建築家
HOPグループ代表 CEO石出和博
~Kazuhiro Ishide~
北海道芦別市生まれ、北海道産業短期大学建築学部卒、中堅青年海外派遣事業で渡米した米国の建築に刺激を受け、日本の伝統建築を学ぼうと帰国。1973年藤田工務店入社、宮大工の技術を学ぶ。1989年1級建築士事務所アトリエアム(株)を設立し、伝統住宅、茶室など多数の作品を発表。1996年林野庁の支援を受け国産木材を活用した産地直送の住宅供給システム、HOPハウジングオペレーションアーキテクツ(株)を設立、現在に至る。受賞歴、著書多数。
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アーキテクツ
現代的な先端の感性に伝統の様式美を調和させ、「100年経ってもさらに魅力を深めてゆく」美しい建築作品を生み出し続ける、気鋭の企業。
“森を建てる”をキーワードに、高品質の国産材にこだわり、乾燥技術から加工技術、建築までを協業化した、画期的な産地直送住宅供給システムを確立。建物に命を吹き込む建築を追求し続けている。