建築家ジャン・プルーヴェとは

このページでは、20世紀のフランス建築界を代表する建築家「ジャン・プルーヴェ」について、その建築スタイルやデザインの特徴、魅力、またジャン・プルーヴェが手がけた代表作などをまとめて紹介しています。自宅として高級注文住宅をプランニングする際の参考としてご活用ください。

建築家ジャン・プルーヴェ

ジャン・プルーヴェは1901年のフランス・パリにおいて誕生しました。父はナンシー派の画家であり工芸家でもあるヴィクトール・プルーヴェ、そして母はピアニストとして知られたマリー・デュアメルであり、ジャン・プルーヴェは幼少期から様々な工芸品や芸術品、音楽といったアートに囲まれる環境で過ごしていました。また、ジャン・プルーヴェの名付け親はフランスのガラス工芸家として知られたエミール・ガレであり、両親だけでなく幅広い感性や才能に愛されながら成長したことも、ジャン・プルーヴェの魅力的な個性や感性を育んだ要素といえるでしょう。


ジャン・プルーヴェは1916年に金属工芸家であるエミール・ロベールに弟子入りし、その後は複数の工房や工場を渡り歩きながら経験を積み、やがて1923年に独立して工房を構えました。


独立後のジャン・プルーヴェはインテリアやエクステリアのデザイナーや製作者として精力的に活動しながら交友関係を拡大し、1930年には現代芸術家連盟の創立メンバーの1人として自らの地位を確立したことも重要です。また、ジャン・プルーヴェはアーキテクトやアーティストとして活動するだけでなく、政治活動や公的な活動にも尽力しており、1944年にナンシー市長として選出されるなど社会的にも貢献してきた経歴は見逃せません。そしてその影響は様々な分野や業界にも波及しており、ジャン・プルーヴェの功績として当時の「ハイテク建築」と呼ばれた建築スタイルや工法を世に広めたことも挙げられます。

1984年3月、ジャン・プルーヴェは82歳の時に故郷のナンシーで息を引き取り、その人生に終止符を打ちました。

ジャン・プルーヴェ
建築の魅力とは

ジャン・プルーヴェの家具や建築の魅力について基本的なポイントを解説します。

合理的な機能美を追求したデザイン

ジャン・プルーヴェは1930年代のフランス経済や市場の発展性を支えるため、大量生産ニーズに合わせて椅子に代表される様々な家具を手がけました。美しいシルエットはデザイン性と合理性を兼ね備えた機能美を有しており、さらに人間工学や機械工学の見地からも剛性や座り心地などを多角的に検討されていたことがポイントです。


家具の構造や設計を手がけることは建築物を取り扱う際と同様に困難で高度な作業であると考え、ジャン・プルーヴェは小さな椅子ひとつにも妥協を許しませんでした。

芸術的感性と工業的再現性の融合

ジャン・プルーヴェの特徴として、工芸家として伝統工芸の美しさや文化の大切さを重視しつつも、近代的・合理的な産業ノウハウをベースとした生産性や機能性も合わせて重視されていたことが挙げられます。また、そのアイデアやコンセプトを実現するための技術や工法の開発にも取り組んでおり、実際スチールパネルを使った可動間仕切りに関して特許を取得したり、設計した注文住宅に可動式フロアや壁パネルを採用したりと、画期的なアイデアを実現していきました。


ジャン・プルーヴェにとって家や建築物、またその中で使われる家具などは、芸術的感性によって生み出される作品であると同時に、人々の生活や市場の生産性と決して切り離すことのない、社会の一部でもありました。そのためジャン・プルーヴェは生涯にわたって、住む人や使う人を置き去りにするような建築物や家具などを良しとするのでなく、より多くの人々が気軽に芸術や工芸の魅力へ触れながらその生活を豊かにしていくためのアイデアを大切にしたことは見逃せないでしょう。

プレハブ工法の実践

工場で部材を量産し、現地で組み立てるというジャン・プルーヴェの発想は、現代のプレハブ工法としても知られています。ジャン・プルーヴェはプレハブ工法の実現化や普及に向けて取り組んだ人物の1人としても知られており、フランス政府はジャン・プルーヴェのアイデアを取り入れて戦時中に住宅や軍事施設をプレハブで建てるといったことも決定しています。


住む人の暮らしや感性にこだわった高級注文住宅と、安価で迅速に建築・分解できるプレハブ工法は一見すると相反するような関係に思われますが、ジャン・プルーヴェにとって住まいの豊かさを追求しながら住みやすさや設置しやすさを両立させることは生涯のテーマであり、そこには決して単なるコストパフォーマンス最優先の意識があったわけではない点が重要です。

ジャン・プルーヴェの代表作

ジャン・プルーヴェの代表作の一部を簡単に紹介します。

クリシー人民の家

ジャン・プルーヴェの初期の代表作として知られた、クリシー市に建てられた建築物です。ウージェーヌ・ボードゥアンやマルセル・ロッドといったフランス人建築家との合作であり、意匠的・芸術的な価値だけでなく、可動式の屋根や床、主構造として用いられた鉄骨構造など、フランスの近代的建築を象徴する建物としての価値からも注目されました。

パリ天文台の子午線室

パリ天文台はパリにあるフランス国内で最大規模を誇る天文台であり、天文学研究センターです。17世紀に建設がスタートして以降、時代ごとに建設・増設を繰り返し、この子午線室はジャン・プルーヴェによって設計されました。

ムードンの工業化住宅

フランスの都市の1つムードンにおいて、1950年から1952年にかけて建設されたプレハブ住宅です。金属と木材によって構成されたパネルによって建てられたプレハブ住宅は、住宅や住宅設備の工業化・量産化についてジャン・プルーヴェの理念を支えるものとなりました。

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