建築家 リチャード・ロジャースとは
ここでは、イギリス建築界の巨頭、リチャード・ロジャースをご紹介します。
リチャード・ロジャースとは
リチャード・ロジャースはリバーサイド男爵という一代貴族としても知られる、イギリス建築界の巨塔です。1971年「ポンピドゥー・センター」のコンペで最優秀賞を受賞して世界的に知られるようになりました。
作品の特徴は、機能主義的なデザインとハイテク志向のデザインです。ハイテク建築は1970年頃に登場した建築様式です。本来隠していた構造や設備を隠さず見えるように表へ出します。たとえば、水道管や冷暖房ダクトや電気パイプなどです。
建物の内部空間をすっきりさせることを目的としていますが、その建築様式は以降、リチャード・ロジャースの代名詞となりました。登場直後は、化学工場のような外観により世間を賑わせています。1933年生まれですが、2021年に亡くなりました。享年88歳です。
リチャード・ロジャース
建築の魅力とは
リチャード・ロジャースの建築には、どのような特徴があるのでしょうか。
前衛的な建築
リチャード・ロジャースを世に知らしめたのは、1971年に建築家であるレンゾ・ピアノと共同設計した「ポンピドゥー・センター」のコンペで、最優秀賞を受賞したことです。その受賞は「建築界に革命をもたらした」と高い評価を受けています。
コンペで受賞はしたもの、建築当時化学工場のような外観のポンピドゥー・センターは、評論家に「内臓主義」と呼ばれるほど否定する意見もありました。しかし、同様のモダニズム建築の影響による機能主義的デザインとハイテク志向の建築デザインが見られる建物をいくつも設計しています。既存の建築に対する既成概念はポンピドゥー・センターという前衛的なデザインに破壊されたといってもいいでしょう。新しい建築の可能性とともに時代が訪れたのです。
ハイテク・メカニカルな外観
リチャード・ロジャースは、建築以外に「建築都市デザイン」にも力を注いでいます。ロンドン建築都市デザイン委員会議長も務めました。その傾向は「公正で美しく、創造的、エコロジカル、郊外へ広がらないコンパクト、多角的な都市」というものでした。保守的な考えとは対立する革新的なコンセプトです。
ロンドンの町並みは古典的な建築作品が多く残っていますが、ロジャースが手掛けた保険組合・ロイズの本社ビル「ロイズ・オブ・ロンドン」は工場のようなメカニカルなデザインをしており、それまでのロンドンの形式とは外れたコンセプトでした。
ただ、ロイズ・オブ・ロンドンの評価も高く、代表作ともなっています。
リチャード・ロジャースの
代表作
リチャード・ロジャースは生涯に渡り、多くの建築物を発表してきました。日本にもいくつか建築物を建てています。
政策研究大学院大学
政策研究大学院大学は政策研究専門の大学院大学で、リチャード・ロジャースと、日本の大手設計事務所・山下設計による共同設計です。リチャード・ロジャースの特徴である、ハイテク建築の要素はそこまで前面に出ていません。ただ、ハイテク建築の香りが漂う現代的なデザインです。
建物は研究室が入った14層で構築された高層棟、5層で大空間の低層棟で構成されています。低層棟ではハイサイドライトが連続している外観です。設置された水平ルーパーは建物内に太陽の光を取り込むために設置されています。
高層棟は段状になっており、1階から最上階までダンパーが連なっているのが特徴です。高層棟のデザイン性はリチャード・ロジャースのハイテク建築でよく見られるものです。
新風館
京都府京都市中京区に位置する新風館は2001年1月、リチャード・ロジャース設計で竣工しました。テーマは伝統と革新です。新風館の前身は、旧教徒中央電話局が竣工しています。近代モダニズムの先駆者・吉田鉄郎氏の代表作であり、大正時代の歴史的建造物です。
外観は旧電話局を保っていますが、リチャード・ロジャースの手により新しい風が吹き込みました。新旧の建物の中にある四角い中庭には、ロの字の歩廊が設置されています。その歩廊により新旧建物がつながることになりました。
外観に設置されたルーパーや、既存のレンガ建造物ときめ細やかな鉄骨の組み合わせがリチャード・ロジャースのデザイン性を感じさせるものです。
歌舞伎町プロジェクト(林原第5ビル)
狭い敷地内での地下3階、地上10階建てのオフィスビルです。1993年に竣工しました。ステンレス構造のトラスが架かったアトリウムによる大空間に大きな特徴が見られます。また、アトリウムはヨットのマスト構造の応用という点がユニークです。
前面から見たアトリウムの外観も他ではなかなか見られない特殊な構造のデザインとなっています。外部階段と屋上屋根は吊り構造となっているのも特徴的です。
代表作のポンピドゥー・センターやロイズ・オブ・ロンドンのような、一大プロジェクトで大規模な建築物というわけではありませんが、リチャード・ロジャースのテクニカルな建築デザイン性が確かに見られる建物として存在感を放っています。
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アーキテクツ
現代的な先端の感性に伝統の様式美を調和させ、「100年経ってもさらに魅力を深めてゆく」美しい建築作品を生み出し続ける、気鋭の企業。
“森を建てる”をキーワードに、高品質の国産材にこだわり、乾燥技術から加工技術、建築までを協業化した、画期的な産地直送住宅供給システムを確立。建物に命を吹き込む建築を追求し続けている。