新築を考えていますが、風水と家相の関係が気になります。
「迷信だ」と思って今まで気にしていなかったのですが、いざ自分が新築を考えるようになり、テレビや雑誌で話題の“風水”が気になり出しました。本を買ってきて自分なりに研究をしているのですが、自分が考えている理想の間取りを風水に照らし合わせてみると、必ずどこかに問題が発生し、どうしてよいか分からなくなってしまいました。家を建てるにあたって、風水と家相をどの程度考慮したらよいのかアドバイスよろしくお願いします。
(岩見沢市・Aさん)
(札幌市・Yさん)
方位学や風水は中国の都市計画設計からはじまったもの
鬼門に風水、設計者泣かせの問題です。せっかく決まった設計プランが、家相によって振り出しに戻ってしまうということがおこります。
私も何年か前に、どうしても方位を最優先したいというお施主様の住宅を設計したことがあり、ずいぶんと勉強したものです。しかし、方位学や風水はもともと中国の都市計画設計において、地形や気候条件の風や気の流れを探ることからはじまった学問で、日本の住宅のように60坪や70坪の敷地だけを見て決められるものではないのです。
そもそも日本の気候条件に風水は符合しない
北海道は北に位置していますから、南の太陽の光を出来るだけ多く取り入れるための住宅を設計します。そのために、南西にリビングを配置することが多いのですが、それは「嫁姑の問題がおきやすい凶相」だからと心配された施主の母親から相談されたことがありました。
せめてトイレの位置だけは鬼門に配置しないように気を使っていますが、子供部屋と主寝室の位置には苦労したこともありました。子供たちのためにと南の部屋を確保していたのですが、遊び好きになるからと北へ移動し、そこに主寝室をと言うと、西の寝室が吉だといわれ、結局は西日の強い部屋になってしまいました。どう考えても日本の気候条件には符合しないわけですが、もともとは日本とずいぶん緯度が違う中国に発祥した風水学ですので、全てを鵜呑みにしてはいけません。
自然の中で生きていることを意識しましょう
本来、人間は自然界の波動の中に存在しています。他の動植物と同じように自然界の法則に則って生かされているのです。人間も自然界の一部であるという考えからすると、私たちを取り巻く周囲の環境から考えて、不自然な状態であったり、不健康になる仕上げ材で作られていては、方位の問題だけではすまないはずです。
光が十分に当たり、風通しの良い設計をする場合、何時どの部分に陽光が入るのかということを抜きにしては図面を書くことはできません。気持ちがいい住宅は、それを構成している空間や木、土や紙などから発するぬくもりが住む人にうまく伝えられているのです。
昔の家にはどこにでもあった大黒柱や土壁は、木や土の持つエネルギーや波動を住宅内に取り入れたもので、それに触れることによって人は安らぎを得たり、元気を取り戻したりすることができたのではないでしょうか。
風水は参考程度に留めることをおすすめします
最新の住宅は技術を駆使して性能だけが著しく向上しても、それが自然界に暮らす人間のメカニズムと合わないものであれば残念なことです。方位だけの問題ではないのです。
家を建てる場合、周辺の環境が住空間に与える影響を考慮しなければならず、それを無視し、方位を優先した考え方では、一生を隣の壁を見ながら生活しなければならなかったり、家の中を外から覗かれながら窮屈な暮らしを強いられたりするおかしな住宅に出来上がってしまいます。風水はあくまでも参考、お遊び程度に付き合ってほしいと私は思うのですが、いかがなものでしょうか。
松下幸之助が、昭和8年に大阪から見ると鬼門に位置する築地門真の地に、周囲の反対を押し切って大工場を建て、後の大躍進を果たした時、「すべては自信を内に宿して進めば憂うべきはなにもない」と語ったと言います。水洗化されたトイレと家中で一番高価なシステムキッチンが並ぶ時代、神経質に考えずに、視点を変えてはいかがでしょうか。
編集チームのまとめ
風水よりも自然のエネルギーを取り入れよう
一度気にし始めると止まらなくなりがちな風水ですが、もともとは中国の気候風土に合わせた学問であるとのこと。そのまま日本の風土や住宅に取り入れるのは、混乱のもとのようです。日本には日本の素晴らしい風土があり、自然のエネルギーを取り入れられる天然素材が豊富にあります。学問上の風水ばかりを気にするのではなく、もっと自然の声やエネルギーを取り入れて住まいづくりを楽しむべきですね。
建築家
HOPグループ代表 CEO石出和博
~Kazuhiro Ishide~
北海道芦別市生まれ、北海道産業短期大学建築学部卒、中堅青年海外派遣事業で渡米した米国の建築に刺激を受け、日本の伝統建築を学ぼうと帰国。1973年藤田工務店入社、宮大工の技術を学ぶ。1989年1級建築士事務所アトリエアム(株)を設立し、伝統住宅、茶室など多数の作品を発表。1996年林野庁の支援を受け国産木材を活用した産地直送の住宅供給システム、HOPハウジングオペレーションアーキテクツ(株)を設立、現在に至る。受賞歴、著書多数。
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アーキテクツ
現代的な先端の感性に伝統の様式美を調和させ、「100年経ってもさらに魅力を深めてゆく」美しい建築作品を生み出し続ける、気鋭の企業。
“森を建てる”をキーワードに、高品質の国産材にこだわり、乾燥技術から加工技術、建築までを協業化した、画期的な産地直送住宅供給システムを確立。建物に命を吹き込む建築を追求し続けている。