限られた予算の中で、どこまでバリアフリー仕様の家が建てられるのでしょうか。これだけはしておいた方が良いというものがあれば教えてください。
新築を考えています。昨年あたりから、あちこちのモデルルームを見たり、いろいろな雑誌を見ていますが、現在45歳の私は、はたしてどこまでバリアフリーを考えておいたら良いのでしょうか。
一般的な家とバリアフリー仕様の家とでは建築価格がかなり違うので、バリアフリーは諦めようかとも思ったり、でも年を取って車イスが必要になった時、やっておけば良かったということになるのかもしれません。限られたお金の中でこれだけはやっておいた方が良いということを教えて下さい。 (札幌市・Mさん)
将来、必要となったときにバリアフリーにできる工夫を
バリアフリー住宅はけっして特別な住宅ではありません。お年寄りや体の不自由な人にとって障壁となるものを可能な限り排除しようというのがバリアフリーの目的なのです。それは子供からお年寄りまで住みやすい住宅と考えるべきなのです。
しかし、手すりをつけて、段差をなくし、廊下やドアの幅を広げて機能を充実させても、そこが病院のように見えてしまうのでは住む人にとって楽しい空間にはなりませんから、必要な部分に必要なものが将来取り付けられる工夫をしておくのが良いでしょう。
これだけはやっておくと◎ 最低限のバリアフリー対策
そして最低限やっておいた方が良いものをご紹介しましょう。
- 玄関
「玄関上がり框(あがりかまち)を50ミリ以下にしておく」
写真は5センチの場合。将来腰掛けを付けると良い。(車イス対応になった時、5センチ以下のスロープをこの場所に付けることになる。 - 廊下
「廊下幅は内々85センチはほしい」
理想的には90センチ~100センチあれば良いが、そのために坪単価が上がることはないはず。(建築する分だけの建築費は上がることになる) - 床
「室内の戸口下の段差を無くしておく」
「段差のない敷居」
車イス利用の場合、車イスの座の高さまでタタミを上げて小上がりにする方が使いやすい場合もある。 - 浴室
「バリアフリータイプを選ぶ」
浴室は将来一番変更が難しいので、これだけはバリアフリータイプを使っておいた方が良い。経済的なタイプが各社出始めている。 - 洗面所
「使い勝手を考えるなら引き戸が望ましい」
洗面所などの狭い場所への出入口は引き戸が良い。車イスによる歩行が容易になる。 - トイレ
「ゆったりした広さを確保しておく」
トイレの幅は車イスを考えると内々1メートル10センチ以上ほしい。ただし、車イス利用の程度や介護者の有無によって、このスペースは狭い場合もあるが、そこまで現在考えられないと思う。手すりは将来どの場所でも取り付けられる様下地を入れておくと良い。 - 階段
「ムリなく上り下りできるゆるやかな段差」
階段の段差はゆるやかな方が良い。踏面27センチ蹴上18センチが理想的な寸法。上り下りの際に必要とされる手すりは直径35ミリの円形がにぎりやすい。(2階に上ったり下りたりすることは不便なのではなく、健康に良いと考える前向きな生き方をしたい) - 手すり
「将来、取り付けられるようにしておく工夫を」
今は手すりを必要としていなければ、無理に取り付ける必要はありません。ただ、手すりが取り付けられる工夫をしておくことは必要で、下地を入れておく場合と、仕上げの種類によっては表面に取り付けておく場合の2つの方法がある。後者の場合、デザインとして楽しむ効果もある。手すりはバー型のものばかり考えなくても良い。生活が楽しくなる様な小物として考えてみるとおもしろいものが出来る。
編集チームのまとめ
将来のバリアフリーを考えることが大切
「バリアフリーは決して特別な住宅ではないが、最初からバリアフリーにしておく必要はない」
「将来、必要な部分に必要な機能を取りつけられるようにしておけばいい」
というハウスドクターの見解に納得。浴室は最初からバリアフリータイプに、階段の段差をゆるやかになど、最低限やっておきたいバリアフリー対策についても詳しく紹介されており、「これさえやっておけば将来的に最低限のリフォームで対応できる」と感じました。
建築家
HOPグループ代表 CEO石出和博
~Kazuhiro Ishide~
北海道芦別市生まれ、北海道産業短期大学建築学部卒、中堅青年海外派遣事業で渡米した米国の建築に刺激を受け、日本の伝統建築を学ぼうと帰国。1973年藤田工務店入社、宮大工の技術を学ぶ。1989年1級建築士事務所アトリエアム(株)を設立し、伝統住宅、茶室など多数の作品を発表。1996年林野庁の支援を受け国産木材を活用した産地直送の住宅供給システム、HOPハウジングオペレーションアーキテクツ(株)を設立、現在に至る。受賞歴、著書多数。
〈sponsored by〉
アーキテクツ
現代的な先端の感性に伝統の様式美を調和させ、「100年経ってもさらに魅力を深めてゆく」美しい建築作品を生み出し続ける、気鋭の企業。
“森を建てる”をキーワードに、高品質の国産材にこだわり、乾燥技術から加工技術、建築までを協業化した、画期的な産地直送住宅供給システムを確立。建物に命を吹き込む建築を追求し続けている。