車庫の上の部屋は風水的に良くないのでしょうか?
新築を考えています。やっと気に入った間取りにたどりつきました。ところが風水に詳しい友人に見せたところ、車庫の上の部屋は良くないと言われました。
普段は風水や迷信など信じない私ですが、どうしても気になってしまいます。いかがなものでしょうか。
(札幌市・Kさん)
方位にとらわれて生活習慣を変えるのはナンセンス
住宅設計をしていて、このごろ方位や風水を気にされる人が多くなったと実感します。一般的にはただ単に方位に間取りを合わせることで逃げていることが多いようです。
しかし建築家の視点から言いますと、その家にどのように住みたいかという生活習慣を変えてまで方位重視で設計してはいけないと感じています。設計依頼者の中には、住み手の一人ひとりの本命星を導いて間取りに合わせたいという人もいますが、家相の基本ラインがしっかりと押さえられていて、楽しい間取りが確保されていれば合格と考えるべきでしょう。
住まいは「住み手にとって魅力的」であるべき
バランスの良い家は、自然との調和がとれ、心地よい空間が形成されているもの。良い家相とは、光や風といった自然のエネルギーを無理なく建物の中に取り入れ、快適なエネルギーの流れを持っているものです。
理想の家づくりを目指した時に、自分に合った生活観や仕上げ材など、自然と調和した心地よいと思えるものが、生活の一部として取り入れられることが一番なのです。
ただ家相のみを住宅に完璧に取り入れようとすると、住み手一人ひとりの生年月日によって吉、凶の方位が決まり、設計が大きく左右され、プランが思うように決まらないものです。
住まいは心を反映させたものですから、住空間は自分にとって魅力的であるべきで、それが人生の生きる活力と魅力に反映していくのです。家相にあわせて一つひとつの空間に、あっちこっちと細切れの箱を作るような作業を加えてしまっては魅力ある住宅はできません。私たちは自然の中で生き、その恵みを受けて生活しています。風水で言う自然の作用を無視することができないのは当然のことなのです。
敷地や環境の判断も重要です
風水では四神相応といって、家をとりまく環境を、北に山、東に川、西に道路、南に緑地が吉相と言います。結局、北の寒い風を抑え、東や南の太陽の恩恵を受け、風通しの良い環境がいいということなのです。
しかし広い原野に住宅を建てることなら可能でしょうが、60坪ほどで区切られた敷地の中で方位だけで間取りを決めると、一番いい場所であるはずのダイニングの窓からトイレが見えたり、リビングから隣のマンションの壁を見て生活し、一日中カーテンで目線を隠しているという我慢できない環境が現実に起こります。ハウスドクターの相談の中に実際にある話です。
設計者は建築環境学的な判断、言い換えれば建築する敷地の光、風、景観、道路、両隣の状況などの判断が非常に大切です。いくら図面で方位と格闘しても、現場に一度立つだけでその何十倍もの情報を五体にインプットできる感覚が設計者になければだめなのです。その上でゾーニング、プランニングが行われ、その中に方位学の基本を検討するということができなければなりません。
車庫を室内と同じような環境に保つことで解決
ご質問の場合、いい間取りができたと喜んでいたのですから、車庫の上が悪いとは一概に言えません。私たちは、自動車の存在を考えないで生活することは不可能な時代に生きているのですから。風水の起源からすると、当時は自動車の存在がなかったわけですから、車庫を風水から割り出すということもおかしなことです。
しかし、車庫が1階にあるために2階が寒いとか、排気ガスが室内に侵入するといったことで影響を受けるとしたら問題です。それを風水的に問題があるという言葉にしているのかもしれません。
また、吹きさらしの車庫だと壁量強度の面でも、断熱の方法でも問題になります。そういう欠陥を排除し、車庫を室内と同じような環境に保つことによって、1階の車庫もなんら問題はないと考えていいのではないでしょうか。
ですから1階の部分の車庫や、玄関続きで室内に入れる車庫は、車置き場だからといっていい加減な工事をしてはなりません。室内と同じように、湿気がなく、断熱を確実に行い、換気を十分に考え、排気ガスをシャットアウトでき、シャッターや開口部分を頑丈なものにするという配慮が必要でしょう。それが風水的に適うということだと思います。
編集チームのまとめ
風水よりも自然との調和が大事
方位や風水は家づくりにおいて気になる部分ではありますが、そればかりにとらわれて「こんな暮らしがしたい」という希望を変えてしまうのはいただけないとのこと。それよりも、自然との調和がとれていて心地よく暮らせる環境がバランスよく形成されている、魅力的な空間になっているかどうかを重視すべきとのことです。「住まいは心を反映させたもの」「住空間は自分にとって魅力的であるべき」という考え方に、深く納得です。
建築家
HOPグループ代表 CEO石出和博
~Kazuhiro Ishide~
北海道芦別市生まれ、北海道産業短期大学建築学部卒、中堅青年海外派遣事業で渡米した米国の建築に刺激を受け、日本の伝統建築を学ぼうと帰国。1973年藤田工務店入社、宮大工の技術を学ぶ。1989年1級建築士事務所アトリエアム(株)を設立し、伝統住宅、茶室など多数の作品を発表。1996年林野庁の支援を受け国産木材を活用した産地直送の住宅供給システム、HOPハウジングオペレーションアーキテクツ(株)を設立、現在に至る。受賞歴、著書多数。
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アーキテクツ
現代的な先端の感性に伝統の様式美を調和させ、「100年経ってもさらに魅力を深めてゆく」美しい建築作品を生み出し続ける、気鋭の企業。
“森を建てる”をキーワードに、高品質の国産材にこだわり、乾燥技術から加工技術、建築までを協業化した、画期的な産地直送住宅供給システムを確立。建物に命を吹き込む建築を追求し続けている。