狭い土地に、3階建ての車イス対応住宅は建てられるでしょうか。
車イスに対応できる住宅を建てようと考えています。2~3の住宅メーカーのモデルルームを見て歩きましたが、インテリアや考え方の点でピンときません。そのうえ建築費も通常の20~30%くらいアップするといわれました。
また、現在住んでいる土地が狭く、車庫を取るとどうしても3階建てになるということで、別の広い土地に買い替えることを勧められました。しかし仕事の関係があるのと、現在の土地にやはり愛着もあります。
3階建てにした場合どのような問題があり、車イスに対応する住宅は可能なものなのかどうかアドバイスをお願いします。 (札幌市中央区・Yさん)
まず2つのプランを作成してみましょう
Yさんにお電話でお話を伺いました。現在住んでいらっしゃる土地が、回りの人たちにも恵まれて大変気に入っていらっしゃるということです。ご主人が入院中で、退院されると車イスの生活になるという事情から、住宅の改築あるいは新築を考えています。品のある落ち着いた住宅を希望されていました。
高齢者用住宅またはケア住宅は、決して特別な住宅ではありません。住みやすさという面で、歩行の安全、廊下の幅、車イスの高さとの関係、衛生設備の種類などに気を付けて設計しなければならないことはありますが、建て主とよく相談して決定します。どちらかというと、当たり前のこととして考えなければならないことです。
いつも思うことですが、既製品の衛生陶器や流し台がケア製品ということで、高い価格なのには驚きます。量が少ないということで割高になるのでしょうが、そろそろ一般のものと同じ価格になってほしいものです。その部分が建築費に跳ね返るので、坪単価が高くなるのですが、せいぜい全体の10%が目安だと思います。
3階建て車イス対応住宅例
参考までに、以前実際に設計した3階建てのケア住宅の図面を見てもらい、参考にしてもらうことにしました。
- <3階>
収納やドア、引き戸の取っ手の高さ・棚の高さをよく検討する。
窓の高さ、引き手の高さをよく考えておく。
衛生陶器はカタログを見て、実際に実物を見て決めること。
ケア用流しはその人に合わせて造作した方が、いろいろなことができる。 - <2階>
引き戸を多く使うこと。
廊下幅は、内々で1メートル以上とする。
段差をなくす、プラスマイナス20ミリ以内が望ましい。
手すりを取り付ける場所を良く考える。 - <1階>
車イスの場合、玄関の靴ずりの高さを20ミリ以内にするのが理想的。
車庫から玄関へのアプローチもよく考える必要がある。
エレベーターは年々安くなって使いやすくなってきた。
エレベーター室は外気が入りやすいので設置する場所を良く考えること。
編集チームのまとめ
ポイントを押さえれば3階建て住宅も可能
車イスで暮らせるケア住宅は決して特別な家ではない、むしろ当たり前のこととして考えるべきというハウスドクターの見解。引き戸をうまく使う、取っ手の高さをよく検討するといった注意点はありますが、3階建て住宅も十分に可能なようです。つい制約にとらわれがちなケア住宅ですが、夢がグンと広がりますね。
建築家
HOPグループ代表 CEO石出和博
~Kazuhiro Ishide~
北海道芦別市生まれ、北海道産業短期大学建築学部卒、中堅青年海外派遣事業で渡米した米国の建築に刺激を受け、日本の伝統建築を学ぼうと帰国。1973年藤田工務店入社、宮大工の技術を学ぶ。1989年1級建築士事務所アトリエアム(株)を設立し、伝統住宅、茶室など多数の作品を発表。1996年林野庁の支援を受け国産木材を活用した産地直送の住宅供給システム、HOPハウジングオペレーションアーキテクツ(株)を設立、現在に至る。受賞歴、著書多数。
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アーキテクツ
現代的な先端の感性に伝統の様式美を調和させ、「100年経ってもさらに魅力を深めてゆく」美しい建築作品を生み出し続ける、気鋭の企業。
“森を建てる”をキーワードに、高品質の国産材にこだわり、乾燥技術から加工技術、建築までを協業化した、画期的な産地直送住宅供給システムを確立。建物に命を吹き込む建築を追求し続けている。