建築家マリオ・ボッタとは

ここでは、スイスの現代建築家マリオ・ボッタの建築の特徴や魅力を紹介しています。略歴から設計思想、傾向、テイスト、代表作も取り上げていますので、理想の高級注文住宅を建てるための参考にしていただければ幸いです。

マリオ・ボッタとは

マリオ・ボッタは、1943年スイス生まれの現代建築家です。1969年にヴェネツィア大学建築学科を卒業したほか、同大在学中にはル・コルビジェ、ルイス・I・カーンという、いずれも20世紀を代表する有名建築家のもとで働き、建築のイロハを学びました。

大学卒業と同時に独立し、出身地ティチーノ州最大の都市ルガーノに拠点を置き、本格的な設計活動をスタート。 リヴァ・サンヴィターレの住宅(1973年)をはじめ、リゴルネットの住宅(1976年)、マッサーニリョの住宅(1981年)、ワタリウム(1990年)、サンフランシスコ近代美術館(1994年)、聖ジョバンニ教会(1996年)、スカラ座改修(2004年)、チューゲン・ベルグオアーゼ・スパ(2007年)など、数多くの作品を手がけています。

住宅・役所・銀行・図書館・学校・宗教施設まで、幅広いジャンルで設計できるのがマリオ・ボッタの真骨頂。世界各地で作品を発表しており、数多くの賞を受賞している世界的な建築家です。

マリオ・ボッタ
建築の魅力とは

マリオ・ボッタの建築には下記のような特徴や魅力があります。

地域の素材を用いる“地産地消”の建築

マリオ・ボッタ建築の一特徴は「地産地消」です。彼の作品はその多くで、石材・レンガ・コンクリートなど建設地域で採れる地元の素材を用いており、この地産地消の家づくりによる、地域になじみやすい建築設計を心がけています。地域で産出する素材を使用することで、コストをおさえつつ、地域に根付いた理想の建築が可能となるのです。

世界的にも有名な現代建築家で、各国で作品を生み出しているマリオ・ボッタではありますが、その本質はグローバル化ではなく、地域コミュニティの中に形成される独自性にあるといえるでしょう。

幾何学をモチーフにしたシンプルなデザイン

デザイン性に焦点を合わせるなら、マリオ・ボッタの作品は総じて、各種の図形をパターン化した幾何学的でシンプルなデザインが多いのが特徴です。シンプルな形を配することで、建物の普遍性を確保できるのはもちろん、先述した、地元の素材の持ち味を生かすこともできます。

とりわけ、レンガをふんだんに用いた幾何学的デザインによる演出は、マリオ・ボッタ建築の象徴といっていいでしょう。シンプルさを優先することで、かえって各素材の魅力が引き出され、結果的に大きな個性を創り出すことを計算しているかのようです。

アイデンティティのある建築設計

設計やデザインの傾向というより、ポリシーの話になりますが、マリオ・ボッタはアイデンティティのある建築設計を心がけています。すなわち、誰が使用するかわからない相手の見えない建築ではなく、美術館なら美術館、住宅なら住宅と、それぞれの依頼主と「テーマ」に沿った設計を提供したいと常に願っているのです。


一見当然のことのように思えるスタンスが、グローバル化の流れで守りにくくなっているなか、マリオ・ボッタは愚直にもアイデンティティと個性を大切にした建物づくりを目指しています。

建築家マリオ・ボッタの
代表作

名作の多いマリオ・ボッタですが、その中から代表作3つをご紹介します。

ワタリウム美術館

ワタリウム美術館は、東京都渋谷区に所在するマリオ・ボッタの建築設計による現代アート美術館。日本国内における唯一のボッタ作品です。

バランスのよいシンメトリックなデザインとストライプ模様を配した外観もさることながら、特色となるのは立地です。同館は青山キラー通りの「三角地」に立地しており、三角形の土地の形状にならい、建物の形も三角形となっています。

しかも前述の特徴を備えたユニークなデザインであるため、ランド―マーク的建物が多い渋谷区のなかにあっても、ひときわ目を引く存在となっています。

リヴァ・サンヴィターレの住宅

スイスの湖畔に面した丘の傾斜を利用して建てられたリヴァ・サンヴィターレの住宅は、マリオ・ボッタの初期の代表作の一つです。正確な主題はわかりませんが、急傾斜を選んだ立地や大胆な開口を備える外観の造形、「塔の家」を連想するような垂直性など、天然のロケーションと相まって一種独特の雰囲気を出しています。

たかが住宅、されど住宅といわんばかりの、かけがえのないオリジナリティが胸を打つ名作住宅です。

ジャン・ティンゲリー美術館

ジャン・ティンゲリー美術館は、1996年にスイス・バーゼルにオープンした美術館です。
マリオ・ボッタの設計によるもので、館内にはスイスの現代美術家・画家・彫刻家、ジャン・ティンゲリーの作品群を展示しています。

建物は、ワンパターンではない多面的な表情が特徴です。一方でレンガによる重厚感ある外壁が立ちはだかるかと思えば、他方では透明感と解放感のあるガラスによる立面、さらには屋根部分に幾何学的なシェイプの造形を施すなど、多くのユニークな作品を生み出したジャン・ティンゲリーの美術館にふさわしく、多彩で見どころの多い仕上がりとなっています。

建築・芸術好きな方がスイス観光する場合に、ぜひとも訪れておきたいスポットです。

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