崖地に家を建てる

とても家など建てられそうもない崖地を利用して、家を建てられないでしょうか?

質問者

雑誌で、石出さんが建てたという札幌市中央区のG邸を拝見し、どうしても現場が見たくなり、ついに探しあてました。ただもう感激というか、しばらくその場に立ち尽くしていました。

長い年月を経て、なお光を放つ素材感、そんな意味が少しわかった様に思いました。そして驚いたことに、写真ではわからなかったことなのですが、絶壁というか、崖の上に建っていて、道路からは平屋に見えるのに、裏から見ると地上2階になっているのですね。実は私も、バブル時代に崖地を買ってしまい、こんなところに家なんか建たないだろうと思っている宅地があります。G邸のようにこんなすごい崖地に素敵な家が出来るなら、ぜひ新築を考えてみたいとペンをとりました。

売ろうとしても売ることの出来ない様な我が家の土地に、どのように建築したらよいのか教えて下さい。当方、子供2人の40歳代、4人家族です。

(札幌市・Yさん)

質問者

小川の流れる敷地にヒントを得ました

石出和博

Yさんからいただいた地図と宅地の図面をもって、敷地を見に行ってきました。確かに道路から2メートル以上低い土地で、更に奥の方へ傾斜している様です。奥の方は、うっそうとした木々が茂り、枯葉が一面に敷きつまっていて、短靴でも奥の方へ行くことが出来ました。図面を見た時から気になっていたのですが、敷地の奥の方に小川があるはずなのです。

私は、自分の家を建てるのなら小川の流れる敷地がいいなあと、いつも思っているほどですから、川の見える敷地には、とても興味があります。小川は、思っていたより水量が多く(ここ2~3日の雨のせいでしょうか)、これだと思いました。これを景色に使おう。

石出和博

土地の形状をうまく利用すれば家づくりはもっと楽しい

私は、色々な傾斜地に家を建ててきました。G邸も、道路から4メートル以上の崖地に建てました。現在、建築中の家は、道路から見ると8メートル以上高い崖地に建てています。

私は、土地をあまり削ったり、盛ったりして変形させることをせず、その自然の傾斜を上手く利用して、その地形を生かす設計をやってきました。段々畑の造成地のように、平らな小さな宅地を造るのではなく、傾斜のままに道をつけて、それなりに建てたら、日本の造成地は、安く造れるうえに、景観が随分変わって楽しく見えるだろうと思うのです。どうしても日本人は、敷地は平らでなくてはいけないと思っているようです。

しかし、それは土木業者さんや建築業者さんの仕事を作り出しているだけで、そうしなければならない宅造法というのがいけないのだと思います。傾斜地をうまく生かして建てる、その様な土地は安いですから、それは狙い目なのだと思います。

周辺環境を生かした楽しいプランが浮かんできました

崖地の家
引用元:建築家+石出和博のハウスドクター診察室

Yさんの土地を見ているうちに、ここで建築してみたいという思いが強くなり、イメージが湧いてきました。

道路部分にブリッジをコンクリートで造って車庫を取り、居間やダイニングはスキップで下に下がって、小川に近い庭へ居間から出られるようにするのが素敵だなと思いました。周りの木々の林の中散策道路を造り、小川の周りも自分なりにガーデニングの一部として活用するのです。周りに建物が建っても、自分の庭に小川があるのですから、木々を植えることで、周りからの視界をさえぎってくれます。

住宅を作るということは、そんな生活の物語を作ることであり、人生最大の楽しい遊びをすることなのだと思えてならないのです。私がスケッチした平面のイメージをYさんにお送りしました。ご参考までに。

編集部のまとめ

柔軟な発想こそが楽しい家づくりのヒケツ

最初は「崖地に家を建てられるのか…?」と不安に思うような相談内容でしたが、敷地内の豊かな自然や、居間から小川に近い庭へ出られるようなプランをイメージするうちに、「とても楽しい家ができそう!」とワクワクしてきました。

「土地は平らでなくてはならない」という固定概念を覆すことで、こんなにも家づくりは自由で楽しくなるのかと、目からうろこが落ちる思いです。

創業者 石出和博
建築家
HOPグループ代表 CEO
石出和博
~Kazuhiro Ishide~

北海道芦別市生まれ、北海道産業短期大学建築学部卒、中堅青年海外派遣事業で渡米した米国の建築に刺激を受け、日本の伝統建築を学ぼうと帰国。1973年藤田工務店入社、宮大工の技術を学ぶ。1989年1級建築士事務所アトリエアム(株)を設立し、伝統住宅、茶室など多数の作品を発表。1996年林野庁の支援を受け国産木材を活用した産地直送の住宅供給システム、HOPハウジングオペレーションアーキテクツ(株)を設立、現在に至る。受賞歴、著書多数。