建築家ヴァルター・グロピウスとは

ヴァルター・グロピウスは、近代建築の三大巨匠(ル・コルビュジエ、フランク・ロイド・ライト、ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ)に加え、四大巨匠に数えられています。 ここでは、ヴァルター・グロピウスの魅力や代表作を紹介します。

ヴァルター・グロピウスとは

後にモダニズムを代表する建築家として知られるヴァルター・グロピアスは、1883年にベルリンの地で誕生しました。1903年にはミュンヘンやベルリンの工科大学で建築を学びます。

卒業後はペーター・ベーレンスの事務所へ入所し、3年ほど勤務。このとき、同事務所にはル・コルビュジエやルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエも在籍していたといいます。ヴァルター・グロピウスはドイツ工作連盟に参加。事務所を退所した後はベルリンに建築事務所を設立しました。事務所の共同経営者はアドルフ・マイヤーであり、長年に渡って仕事を共にしていたそうです。

アドルフ・マイヤーと建築事務所を経営するようになってからは、1911年にアルフェルトのファグス工場を建築。ヴァルター・グロピウスが設計を行ったこのファグス工場は、初期モダニズム建築の重要な例として世界遺産に登録されています。

バウハウスを開校

建築家として実績を積んできたヴァルター・グロピウスでしたが、1919年に「国立バウハウス」を開校します。初代校長として総合芸術としての建築教育を行い、1925年にはバウハウスをデッサウへ移転しました。なお、デッサウにある校舎はヴァルター・グロピウスが設計したものであり、モダニズム建築の代表作として広く知れ渡ります。

ヴァルター・グロピウスがバウハウスの校長として教鞭をふるうのは1928年まででしたが、著書「国際建築」で「造形は機能に従う」という主張を行うなど、建築界に大きな影響を与えている人物です。

モダニズム建築を普及させる

校長退任後は、ベルリンの集合住宅建設を行っていました。1937年にはアメリカに赴き、ハーバード大学建築科の教授となります。そのため他の建築家と比較してヴァルター・グロピウスの作品は多くはありませんが、教育を通じてモダニズム建築を広く普及させています。


ヴァルター・グロピウス建築の魅力とは

ヴァルター・グロピウス建築には、どのような魅力があるのでしょうか。

機能主義の設計

ヴァルター・グロピウスの作品は、ペーター・ベーレンスの事務所に在籍中に参加していた「ドイツ工作連盟」の影響を受けているといいます。

ドイツ工作連盟では、「工業製品の規格統一・基準化」を目指して活動していました。ヴァルター・グロピウスの作品でも「支柱なしの骨組の実現」「機能主義の窓」「エーテル化で採光性を重視」といった、まさに「造形は機能に従う」という言葉を体現したデザインが採用されています。

簡素で実用的なデザイン

ヴァルター・グロピウスの建築を理解するうえで、ヴァルター・グロピウスがバウハウスで何を教えていたか?というのも重要なポイントです。

バウハウスでは、簡素で実用的なデザインを基本としていました。これは、現代のモダンデザインの基礎にあたるものです。しかし、当時はバウハウスのデザインはアバンギャルドとして、保守層には受け入れられませんでした。

それでもヴァルター・グロピウスは芸術家や建築家を育成し、「建築や彫刻、工芸などの一切の造形活動を結集し、芸術と技術の再統一を図る」という教育理念をもち続けました。

建築家ヴァルター・グロピウスの
代表作

ヴァルター・グロピウスの代表作の一部を紹介します。

ファグス工場

1911年から建設が行われた、ドイツのニーダーザクセン州アルフェルトにある靴型工場です。工場のオーナーであるカール・ベンシャイトが、自社が過去と断絶することを願い「革新的なデザインを」と発注したことから建設が行われました。

設計はヴァルター・グロピウスとアドルフ・マイヤーによって行われ、増築や内装を含め1925年に最終的に完成しています。支柱がなく開放された角、全面にでたカーテンウォール、内転びになったピアなどが特徴です。

ヴァルター・グロピウスは「壁の役割は、雨や寒さや騒音を防ぐために架構の直立柱の間に張られた、単なるスクリーンとしてだけに限定される」と述べています。

デッサウのバウハウス校舎

校長であるヴァルター・グロピウス自らが設計したバウハウスの校舎。デッサウ市から潤沢な資金を与えられたこともあり、ヴァルター・グロピウスの建築思想が色濃く表れた作品です。

校舎と渡り廊下には格子状の窓ガラスが設置され、幾何学的な水平窓から日の光が室内へ差し込みます。また、鉄筋コンクリート建築であり、支柱や目立つ屋根などはなく、シンプル。華美な装飾こそないものの、機能性だけではなくシンプルな美しさを感じます。

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