建築家 ザハ・ハディドとは

「奇抜」「斬新」「前衛的」などの言葉で、異端児ぶりが語られることの多い建築家ザハ・ハディド。建築界に新風を吹き込み続けたザハ・ハディドの建築の魅力や代表作について紹介します。

ザハ・ハディドとは

イラク・バグダッドで生まれ、11歳から建築家を志していたという女性建築家です。


脱構築主義を代表する建築家の一人で、未来的な構造やダイナミックなデザインでも知られています。ただ、その奇抜さからコンテストで優勝しても建築されなかった案も多く、「アンビルト(実現できない建築)の女王」と称されたことも。日本でも彼女が携わった新国立競技場の計画が施工費の問題から白紙撤回となり、ザハ・ハディドの名が日本で広まるきっかけとなりました。


かつてアンビルト(実現できない建築)の女王という異名を持っていたザハ・ハディドですが、1994年に手掛けた初の公共建築「ヴィトラ社消防署」(ドイツ)をきっかけに、彼女のデザインが持つ独創性と構想力が評価されるように。大型建築が次々と完成し、2004年には建築のノーベル賞とも言われるプリツカー賞を女性で初めて受賞しています。


2016年に心臓発作により65歳という若さで急逝。彼女が設計した前例のないデザインや構造は建築界に大きなインパクトを与え、今もなお多くの人を魅了し続けています。

ザハ・ハディド
建築の魅力とは

ザハ・ハディドの建築には、どのような魅力があるのでしょうか。

幾何学的な曲線が織りなす流動的な外観

ザハ・ハディドは脱構築主義に分類される建築家の1人で、曲線の女王とも呼ばれた彼女のデザインは幾何学的な曲線と複雑な三次曲面で構成されているのが特徴です。「奇抜」「斬新」「前衛的」などの言葉で語られる独創的かつダイナミックなデザインは、ザハ・ハディドの建築美学を体現しています。

建築家 ザハ・ハディドの
代表作

建築家 ザハ・ハディドが手掛けた建築物のうち、代表的な作品をピックアップして紹介します。

北俱楽部ムーンスーン(日本)

独立してからのキャリア初期は「アンビルトの女王」という異名を持っていたほど、どのプロジェクトも実現しませんでした。そんな彼女の初の実作の舞台となったのは、かつて札幌にあった本格的イタリアンレストラン&バー「北俱楽部ムーンスーン」です。現在は残念ながらお店はありませんが、内装デザインをザハが手掛けています。札幌の冬をイメージしたとされ、曲線と鋭角で構成されたデザインは火と氷という対照的な世界を表現したとのこと。ザハの建築美学の世界観が伺える内装デザインに仕上がっています。

アブドラ国王石油調査・研究センター(サウジアラビア)

広大な敷地とふんだんな資金力を有する中東・サウジアラビアだからこそ、ザハ建築の持つ圧倒的ダイナミズムが花開いた作品。六角形のハニカム構造は、砂漠から現れ出て結晶化したエネルギーを表現しているとのこと。生前のザハが設計したものを、彼女の遺志を引き継いだザハ事務所が完成へ向けてプロジェクトを進行。2017年に一般公開され、まっすぐな壁や天井がほぼない近未来なデザインが大きなインパクトを与えました。

ヘイダル・アリエフ・センター(アゼルバイジャン)

カスピ海に面する国・アゼルバイジャンの首都バクーにある文化複合施設。優美な曲線が流れるフォルムが特徴的で、風にたなびくスカートのようにも見えれば、貝殻や宇宙船などにも見え、人によって印象が変わる多面的な魅力を持った建物に仕上がっています。青々とした人工芝に真っ白なフォルムが映え、国のシンボルとして親しまれている建物です。

520 ウエスト 28th(アメリカ)

ザハ・ハディドがニューヨークで手掛けた最初で最後の作品となった、11階建てのラグジュアリーコンドミニアム。楕円形ガラスの開口部がジグザクと入り組む複雑なデザインをしており、階層ごとに鋼鉄製ファサードがあしらわれています。すべて手作業で磨き上げて塗装されたスチールプレートは、工業地域であるチェルシー地区の産業の精神とワークマンシップの心を建築美として昇華させたものです。

GALAXY SOHO(中国)

33万平方メートルもの広大な敷地に建つ巨大な商業複合施設。4つの棟で構成される建物は直線や角を感じない構造をしており、生物のような丸みを帯びたデザインをしています。

建物の一部がまるで細胞分裂を繰り返すように伸縮して別の棟へと連結するデザインは、どんどん増殖し、進化という新陳代謝を重ねていく北京の街を表現したものとのこと。近未来的なデザインでありながら、中国の伝統様式も取り入れられています。

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